自称うさぎ


番外


2002年2月14日


一昨日、僕は横浜くんだりまで赴き、基本的に濃い人々が利用するゲーム店へと友人と行きました。そこには今度発売されるPS2の新しいゲームの試遊台が置いてありました。それは『絶体絶命都市』という名前のゲームで、大地震で壊滅した都市で死なないようにがんばるゲームのようでした。崩れてきた建物に押しつぶされてミンチになったり頭部だけ破損したりと地震大国大日本帝国としてはいやにリアルな死に方を見せてくれそうなゲームです。なにか愉快な香りを感じた僕はさっそくプレイすることにしました。

オープニング。主人公はのんきに電車に乗っています。他に乗客はいません。海にかかった鉄橋の上を走行するその電車の中で、首都圏に向かう電車がこんなに閑散としていて大丈夫なのかと主人公が無駄な心配してるであろうちょうどそのとき、大地震が起こります。
うわ〜
横転する電車。コミカルな動きを見せる主人公。初めて持つ画面と連動して震えるコントローラーにビクつくプレイヤー。そうこうしてるうちに揺れも収まり、なんとか横転した電車から這い出た主人公が見たものは、今にも崩壊して海に落ちそうな橋の姿でした。はやく逃げなきゃ!そんなことは二の次でプレイヤーは操作方法を調べるためにコントローラーをいろいろ弄りだします。すると、すばらしい発見がありました。
おーい
おーい
おーい
おーい
おーい…

ボタンひとつで呼びかけができます。これはおもしろい。しかし二十回ほど叫んで飽きたので先に進むことにします。てくてくてく。おや、救助のヘリコプターだ。しかも去っていくところのようです。主人公見捨てられました。とりあえず演出上叫んでおきます。
おーい
おーい
おーい…

無論戻ってきてはくれません。他人とはそういうものです。他人を信じたところで無駄です。人生はいつだってひとりです。人はひとりで生きてゆくものです。他人は誰も助けてはくれません。だいたい他人に頼って良い結果が生まれたことなんてありません。むしろ信頼を逆手にとってあんなことまで…っ。他人なんて、他人なんて…。というわけで心にまた傷を一つ創って救助ヘリに背を向けようとした主人公の目にヘリから落下してくる物体が映ります。おおっ、あれはまさしく救援物資、人間とはこのように非常時にも助け合う美しい生き物なのです。人間が醜いなどというのは異教徒どもが流布した妄言だったのです。というわけで余震のたびに画面と共に震えるコントローラーにびくついたり、足元が崩れ去ってるところの細い道なき道で足を滑らせて死んだりしつつ落下物を回収しに行きます。そしてほどなく落下物を海に半分身を乗り出したタクシーのボンネットの上に発見。さっそく自殺覚悟で取りに行きます。
うわ〜
お約束どおりタクシーともども海の藻屑と消えました。しかしこいつの人生はドラえもんの人生やりなおし機がなくともやりなおせる安い代物なので元気いっぱいレッツリトライです。とりあえず今度は海にせり出したタクシーのボンネットの上で喜びをかみしめるのは止めてさっさと戻ることにします。そして、やっとのことでゲットした救援物資には、急いで書いたと思える乱れた字で『すまない。北の陸地にまだ救助隊がいる。そっちへ行ってくれ』とのメモが添えられていました。その救助隊員の無念の思いがこもった『すまない…』との言葉に主人公は流れ出した涙が止まりません。彼が生まれて初めて他人に心を開いた瞬間でした。

そんなわけで人間的に一歩成長した主人公は北へとその歩を進めます。ところがどうしてもひとりでは越えられない段差を発見、そこで都合よく女性の「キャー、タスケテー」との悲鳴がかすかに聞こえてきます。踏み台発見です。さっそく人道に従い助けに行きます。すると、彼女は今にも橋から落下しそうな電車の中でうずくまって震えています。そして、主人公の姿を認めるや否やしきりに「キャー、助けてー」と併用して「こっちに来ないでー」と叫ぶようになります。
ハロー
しかしそんな警告は無視して爽やかに彼女のすぐそばに佇む主人公。その重みに耐えられなくなって当然落下する電車と僕ら。
うわ〜〜〜〜〜〜〜っ
キャ〜〜〜〜〜〜〜ッ

そんな初めて逢った女性との運命的な心中を二回ほど遂げた後、ようやく主人公はロープでも探してくるかとその重い腰を上げます。その後、二、三回自殺するもロープをやっとこさゲットし彼女を救出。こいつを踏み台にさっさと先に進みます。

そんなこんなで北の陸地に到着。やったぁと喜ぶ僕と彼女の頭上を救助ヘリが去ってゆきます。やはり他人は助けてはくれません。他人を信じるとこのように馬鹿を見ます。同じく他人という生き物の冷酷さを心の中で噛み締めているであろう転がっている中年男性の死体を横目に見つつ僕と彼女はそう思ったのでした。そんなところで体験版は終わっています。このゲームがでたら絶対買いません。もうおなかいっぱいです。