有史以来、ポチさんはご自分の体よりも大きいクマのぬいぐるみとの食後の格闘をなによりの楽しみとしてまいりました。あの勇猛果敢なひとり遊びにはいつも感嘆の声を上げさせられているものです。目からは鱗が落ち溜飲は上がります。しかし、昨今不穏な空気が漂い始めました。なんと、数年間ポチさんの相手をしてきたそのクマさんがわりともうダメかもしれない感じなのです。そろそろ内蔵が拝めるかもしれません。中の人に出会えるかもしれません。それはステキな出会いなのかもしれません。そんなこんなで母上から代わりのぬいぐるみを探すように命ぜられました。ですが、愛するポチさんのためとはいえ男がひとりぬいぐるみを探し町をうろつくというのは恥ずかしい以前に犯罪です。最近の刑務所は死刑囚に厳しくなったらしいので勘弁していただきたいです。どうすればいいのでしょうか。いいかげん、ポチさんが愛に飢えた僕の作り上げた妄想で実は僕以外には見えていないということに気付くべきでしょうか。僕の手元にある写真も話を合わせるために家族が用意したものだと気付くべきでしょうか。やさしい家族を持って僕は幸せです。
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